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一通の手紙 3 (お題095) 「ヨシ、と仲ば良かったか?」 教室に入ると、カズにいきなりそんな事を言われた。 「あー、そげん話したこつばなかやったけどな。昨日俺ん家の前の家にが引っ越してきてな、話すようになったけん。朝も偶然家の前で会って一緒に来たとよ」 「ふーん」 それだけを聞くとカズは自分の席へと歩いていった。 自分で聞いといてそんだけかい!と心の中だけで突っ込みを入れる。 カズがただ単に気になったから聞いただけである事は分かるが、それでも自分から話を振ったんだからもう少しまともな反応を返して欲しかったりする。 まあ、昔からこんな感じだったから気にすると負けなのだ。 軽くため息をついて、自分も席につく。と、ちょうど担任が入ってきてHRが始まった。 担任の話は退屈で、ボーっと窓の外を眺める。 空を見れば雲ひとつ無くて、サッカー日和だな、なんて思う。 1限開始のチャイムが鳴って教科書とノートを取り出してからまた外をふいと見ると、体操服の集団が出てきて、その中にの姿を見つけた。 ”ああ、3組は1限体育だったのか”とそのまま見ていると、がいきなり躓いて転けていた。 思わず吹き出してしまってパコンと頭を叩かれた。 「って!」 「城〜光〜、お目当ての女でもおったと?」 「は?」 「女もよかやが今は授業中じゃ。前で問3解いてみろ」 クラス中にくすくすと笑われて頭を掻く。 あー、授業中なん忘れとったと。恥かいたなー・・・ 席を立って、黒板の前でカコカコとチョークを滑らせて言われた問題を解く。 「おーし、正解。一応説明ば聞いとったみたいやな」 正解と言われてホッとする。まあ、これでも数学は得意だったりするし、これぐらいならすぐに解けないこともない。 自分の席に戻ってまたふいと窓の外を見た。 今日の体育は走り高跳びらしくて、次々と順番に飛んでいるのが見えて、そこからまたもの姿を探してしまった自分に首を捻る。 どうも昨日からの事が気になってしょうがない。 前を向くと数学教師がこっちを見ていたのに気付いてパッと俯く。 あー・・・目ばつけられたか? 今日はもう外は見ない事にしよう、と決めて黒板に書かれていく公式やらをノートに書き写す。 「おーい、城光居るとー?」 「あー?居るぞ、何や?」 休み時間になって他のクラスの奴が自分を呼んだのに気付いて教室の入り口へと歩く。 「今日な、放課後に部活会議あるけん。視聴覚室ば集まれってよ」 「そうか、分かった。サンキュな」 「あ、副部長も参加な。そっちにも伝えといてくれや」 「おー」 サッカー部の副部長はカズだ。くるりと振り返ればカズは机に突っ伏して寝ていた。 またか、こいつは。昼寝の好きなやっちゃなあと呆れて、伝えるのは後でもいいかと同じクラスのサッカー部員に会議で今日は遅れる事を伝えて自分の席に戻る。 こんな天気の良い日にそんな会議など行きたくはないが、部長になってしまったからにはサボる事もできない。 思いっきりサッカーしたかったんやけどなと考えていると、もうチャイムが鳴ってしまった。 放課後になって、会議など嫌だと顔に思いっきり出ているカズに苦笑いして、一緒に視聴覚室へ向かう。 ガラガラとドアを開けて入ると結構な人数が集まっていて、空いている席を探していると後ろの席の方にを見つけた。 ・・・・・・どうしてこうもすぐに見つけてしまうのか・・・・・・・ ちょうどの隣が2つ席が空いているためにそっちへと向かう。 「よう、。隣よかか?」 「はい?・・・・・・って城光くん!?あ、どうぞどうぞ」 「サンキュ。おい、カズ早うこっちばこいや」 だらだらと歩いてくるカズにまたも苦笑いして、ガタンと音を立てて座る。 「は部長か?」 「あ、ううん。うちは副部長とよ」 「そうか。・・・・・・・・・・あれ?何部やった?」 「吹奏楽部やよ。知らんかった?」 「知らんかった・・・。そうか吹奏楽かー、何の楽器や?」 「クラリネットやっとうよ。昔教室に通っとってね、今でも続けとうとよ」 「ほー、楽器んこつば俺はよう分からんけど・・・「、これってどうすんやった?」」 と話していると、の隣にいた男が話に割り込んできた。 そのことにちょっとむっとする。人が話しているのが分からないのかこの男は。 眉間に皺を寄せていると、その男がギッと睨んできて”ああ、そうか”と思った。 この男はの事が好きなのか、じゃあ他の男と話していたら邪魔もしたくなるか・・・ そう思って、なら今は引いた方がいいな、と考えるとどこかがチクッと痛んだ。 その事に首を傾げていると、前の方から会議を始めるという声が聞こえて前を向く。 会議が進む間も考えるが分からない。 「ヨシ。・・・・・・ヨシって、おい。呼ばれとうぞ・・・・ヨシ!ごらあ!」 ガツンと頭に衝撃が走って顔を上げると、サッカー部の予算案を出せと言われているのに気付いて慌てて去年と同じ額を用紙に記入して提出する。 「カズ・・・もちっと手加減ばせろや」 「アホが。気付かんヨシが悪か。何をそげん考えこんどうと」 「あー・・・何でもなか。ボーっとしとっただけやけん」 「あ、あの城光くん大丈夫と?何やばりすごか音ばしたけん」 「、大丈夫や。カズはいっつもこげん風やしな、昔からやし慣れたと」 心配気なにそう答えてカッコ悪いところを見られたと落ち込む。 今日の自分はおかしいかもしれない。昼の弁当が何ぞあかんかったか? 会議が終わってサッカー部の練習に向かうも、どこかがスッキリしなくて動きにもそれが現れていたようだ。 またもカズに蹴りを食らって、「頭ば冷やしてこい!」とグラウンドから追い出されてしまった。 「うーん・・・なし今日はこげん調子悪かや?」 ひとり呟きながら、カズに言われたように水道に頭を突っ込んでバシャバシャと水を被る。 ぷるぷると頭を振って水気を飛ばすと上の方から楽器の音が聞こえてきて、見上げてみると3階の開いた窓からのようだった。 少し低い笛の音が心地良い音で、自然心が落ち着いていった。 曲が終わったのか笛の音が聞こえなくなって、そのまま見上げていたらひょいと窓からが顔を出した。 さっきの笛はの吹いていた音だったのか。そういえばクラリネットだと言っていたっけ。 「ー、休憩か?」 「は?え、あ、城光くん!?なしそげんとこに居ると?練習は?」 「はは、頭冷やしてこいてカズに追い出されたと」 「頭冷やす?何かあったと?」 「あー、何や調子悪うてな。自分でも分からんとやけど・・・」 「そっか、無理したらあかんとよ?城光くんいっつも練習頑張っとうけん、少しくらい休憩したらよか」 「おう、そうするわ。・・・・・・て、いっつも?サッカー見とうと?」 「あ、え、あの・・・うん。こっからサッカー部よう見える、けん。たま・・に」 「そっか。おし、が見とうとやったら気張らんといかんな。じゃ、戻るな」 「う、うん。頑張ってね!」 「おー」 と話していたら何だか気分が軽くなったような気がする。 走ってグラウンドに戻って3階の窓の方を振り返ると、まだがそこに居て頬が緩んだ。 「ヨーシ!何しとうと、頭冷えたんやったら参加せんかい!」 「おー、悪かやったな。次の練習ばするぞー。5対5のミニゲームな。レギュラー入れー!」 調子もどうやら戻ったようだ。いつものように体が動く。 は癒し効果でもあるとやろか? →NEXT 4 恋愛には少し疎いだろうヨっさんに愛v
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