雪だるま。
雪のだるま。
あたしの名前
多磨ゆき
「ゆーぅきやこおーんこおーん♪」
「雪だるまは、ほーんまに音痴やなあー」
でたな。意味わからんアホ太郎
「なんや。金太郎!からかいにきはったんか」
最近あたしらんなかでは、この中途半端ぁななまりが流行ってる。
ちなみに雪だるまってうちのこと。
「ちゃうちゃう。おかんがごはんやてーってうわ!これ雪だるまか!?へったくそやな!」
「うっさい!ご飯なんやろ、行くで!!」
「ちょっ、待ちぃや!」
ぶっちゃけ自分でも思った。
雪だるま…下手やな自分。
そんなことどうでもいいんやけど…
「なあなあ、サンタさんて今日くるんやろー」
おかんが答える。
「そやなー。今日やな。ゆきは何頼んだん?」
「内緒や」
「内緒なん?内緒やとサンタさんこーへんよ?」
「手紙書いたさかい」
「今日のご飯美味しーな」
空気読まんかアホ太郎。
「そや、太郎は何頼んだん?」
「鶏肉や。もう叶ってしもーたわ」
「また食べ物頼んだんかい。サンタさんも大変やなー」
家には父さんがいん。
長ーい出張らしい。
3年も帰って来んけど。
だから、うちが頼んだんは父さんや。
「父さん、‘ゆきだるま’ってなんなん?」
「おーゆきは知らんのか。ほんなら雪だるま作ろか!」
「難しぃなあー」
「気長にやればええ。こーゆーんはこつこつやったもんが上手く作れんのや」
楽しかった。
結局上手くできんかったけど、そんでも父さんと作れたことが嬉しかったん。
「雪だるまはなあ、心を込めれば喋りだすんや」
「嘘ぉー」
「嘘やない。話しかけてみぃ」
「…こんにちは」
‘コンニチハ.ユキ’
「おもいっきしお父さんやんー」
「ちゃうてー」
お父さんは腹話術師やった。
大人は子供には嘘つくなあちゅうに、自分はすぐ嘘をつく。
でもお父の嘘はいつも良い嘘やった。
そやからお父はあの日も嘘つきよってんー…
コンコン
「雪だるまあー」
いけない。寝てもーた。
「入るで」
「なんや金太郎!」
「…お前、手紙に父さんのこと書いたやろ」
「見たんか?」
「カンやカン。書き直しぃ。」
なんなん。急に入ってきてぇ
「そんなん、うちの勝手やん」
「おかん悲しませたいんか?」
「ちゃうわ!喜ばせたいんや!」
「ほんならお前のやってることは間違っとる」
そんなん…言われなくたって
「もう!出てきぃ!!」
バンッ
辛くても泣いたらアカン
父さんは帰ってくるんや
「父さんはな、しばらく出張に行くで。その間ええこにしてるんやで。」
「しばらくってどのくらい?」
「すぐや。約束してな」
「うん!ええこにしとる!」
「おかん何で泣いとるん?」
「…っ。父さんは帰って来んかもしれん…」
「帰ってくるぅ言うてたで」
「…ごめんなぁ…」
「なあ、帰ってくるんやろ?」
「父さん帰ってくるんやろ?」
「黙ってへんで答えたらどうなんや」
雪だるまはしゃべらへん。
そないなことわかっとる。
でも信じたくなるん…
「答えてや…」
子供でもわかっとることもある。
二人見てたら何で今こないなことになっとんのかも分かる。
あの日、おかんとお父さんは喧嘩しよった。
お父さんは出張やって言うとったけど、本当は怒って家でたんや。
でも信じたくなるん。
本当はすぐ帰ってくるハズだったん
お父さんはすぐ帰って来てたんや。
おかんに謝りにすぐに帰ってきてたん。
山道なんか通らんかったら…
なぁ、そやから
おかん気付いたってー…
父さんはおかんに会いたくて、はよ帰って来てたんやで。
辛くても泣いたらアカン。
向き合わなイカンのや。
クリスマス。
うちは約束を破ってもうた。
金太郎に謝っておかんと今まで出来んかった話をした。
ええこに出来んかった。
ええこん所にしかプレゼントはきぃへん。
でもええねん。
「前に進まないかん…」
相変わらずうちの雪だるまは歌と同様に下手なまんまや。
でも…
「ほら!はようせんか雪だるま!」
「おかんもはよう!父さん、きっと喜ぶで!」
「…そうね」
父さんは、相変わらず目を閉じたまま白いベットの上におった
「父さん。見舞いに来たで」
「…」
「ほらおかんも何かいわへんと」
「…ずっと、ごめんなさい。」
「これでええねんかったんかな…」
「何を今さら。止めても聞かんかったくせに」
「でも…」
「ほら見てみい。おかん…強いで」
「…うん」
‘アリガトウ.ユキ’
「多磨さん!ご主人が目を…!!」
ほら
父さんは良い嘘しかつかんかったん
■あとがき