●●〜マドンナちゃんの7つの願い〜





これはマドンナちゃんが世奈たちに出会う20年前の話。(マドンナ視点)


俺には願い事が3つある。
1、 改名したい
2、 服を着たくない。脱ぎたい。
3、 ババァどっか行け。
この3つだ。でもどれも当分叶いそうにない。1と2はババァがいる限り無理だし。3もたぶん叶わない。
そんなある日、ババァの知り合いの占い師が来た。そして俺を見るなりこう言った。
「マドンナちゃんは不思議な力を持っています。きっと女神が来て、7つの願いが叶うでしょう」
「まあ7つも!すごいわ〜よかったわねマドンナちゃん!」
ババァはうれしそうに俺を見る。汗で化粧が少し落ちていて、はっきり言ってキモい。
それに7つって…多くね〜か?3つでいいんだけど。それに女神なんて来るわけがない。こいつらアホか?何年間生きてんだ?200年は生きてるだろうに…。ガキかよ。
と思いつつも、俺は7つの願い事を考えた。もし本当に奇跡が起こったら、うれしいし。
4、 痩せたい。最近デブってきたんだ。
5、 人間の言葉を話せるようになりたい。
6、 チョコちゃんを彼女にしたい。だって好きなんだもん。かわいいし。
7、 運動神経抜群になりたい。俺ノロマだし…。
以上だ。



夜になって、いつものようにババァが来る。
「さあマドンナちゃん。おねむの時間ですよ〜一緒に寝まちょうね〜」
『おねむ』?『寝まちょう』?なんで赤ちゃん言葉?しかも顔すり寄せんな!気色悪い!そのキツイ香水の匂いどうにかしろ!
あ〜やっぱ願い叶ってほしい〜!



「マドンナ、マドンナ。」
誰かが俺を呼ぶ。ババァ?違う。あいつは俺を呼び捨てにしないし、こんなに綺麗な声じゃない。
「起きてください、マドンナ。私は、貴方の願いを叶えに来た女神です。」
女神?願い?まさか…
「あの占い師が言ってたこと、本当だったのか…」
「そうです。さあ、私に貴方の願いをお聞かせください。叶えて差し上げましょう。」
女神は微笑みながら言った。絹のように白い肌。清楚で美しい顔。飼われるならあんなババァじゃなくて、こんな美人が良かったな〜。
「えっと願いは…改名したい!ジョンがいいな。かっこいいし!」
「いいでしょう。では貴方の新しい名前はラガーです。他の願いは?」
「服はもう着ない。ババァ以外の飼い主に飼われたいな。綺麗な姉ちゃん!あと痩せたい。で、人間言葉を話したい。
でもってチョコちゃんを彼女にして、運動神経抜群にしたい!」
「いいでしょう。すべて叶えましょう。ではどうぞ。あそこが貴方の理想の世界です」
「おう!ありがとうな!感謝するぜ!」
俺は笑顔で理想の世界へ向かった。そう、理想の世界へ。



起きると、きれいな女の人が目の前にいた。あの女神様のような美しい若い人。
「ジョン、ジョン。おはよう。ご飯食べる?」
「おう!」
て、あれ?俺喋ってる!そっかここは願いが叶った世界。俺、喋れるんだ!そして、あの暑苦しい服を着てない!しかも痩せてる!ナイスガイ!最高だ!
「はい。ご飯よ」
食事の内容はいつもと一緒。高級ドッグフード。だけど、食べてみるといつもと味が違っていた。そうだ。いつもババァは料理下手なくせに、ドッグフードにいろんなモン混ぜるんだ。
『こうすると美味しいのよ〜』
とか言って。はっきり言って、入れないほうがうまい。だから入れられなくて良かった。でも、この人は見たところ料理上手そうだし、頼んでみようかな。
「なあ、これになんか入れてくれよ」
「ごめんね。今から仕事行くから、また今度ね」
そういって俺の新しい飼い主は家を出て行った。ババァなら、仕事そっちのけで俺の面倒見てくれるのに…て、何考えてんだ俺は!
あんなキモいおばちゃん、いなくなってせいせいじゃねえか。なに寂しがってんだよ、俺。ああ、こんなこと考えてないでチョコちゃんのとこに行こう!俺の彼女なんだよな〜。
そう考えるだけで顔がにやける。早く会いたい。
ドアの下のほうに開いているペット用のドアから外へ出る。すげー俺…足、速!運動神経超抜群じゃん。

そしてチョコちゃんの家に着く。チョコちゃんの飼い主はババァの知り合い。それがきっかけで、チョコちゃんに出会った。
門には見張りがいる。見張りは俺を見て、
「チョコ様の婚約者様だ!お通ししろ!」
と言う。すげー婚約者様だって!ほんと最高!
門が開き、家に入ると、かわいく着飾ったチョコちゃんがいる。いつもなら会うなり『何しにきたの?用がないならさっさと帰って』と言われる。でも今日は、俺にこう言った。
「ジョンったら、こんな朝早くに…ひどいわ。もっときれいな格好をして会いたかったのに…」
これが…これが…彼氏!まさかチョコちゃんにこんなこと言われるなんて…。チョコちゃんかわいすぎだろ!
「どうしたの?固まっちゃって…」
そう言いながら、チョコちゃんが俺の顔をペロッとなめる。すっかり興奮しきった俺はそのままぶっ倒れちまった。チョコちゃんはそんな俺のそばにずっと居てくれたとか。
でもチョコちゃんは俺を『ジョン』って呼ぶんだ。まあこの世界の中では俺はジョンと言う名前なんだから、当然なのだが…なんだか落ち着かない。
別にマドンナって名前が良いわけじゃないけど。
「ねえ、ジョン。今日何の日か、知ってる?」
チョコちゃんが俺に少し恥ずかしがりながら言う。
「何の日だっけ?」
「えっ!わからないの?今日は1年前にジョンが私に告白してくれた日よ?」
「そうなのか?」
「そうよ。『俺がすきなのはチョコちゃんだけだよ』って言ってくれたじゃない!忘れちゃったの?」
「いや、忘れるもんか!ちゃんと覚えてるぜ!」
「良かった〜」
チョコちゃんはとてもかわいらしく笑った。でも、ちがう。俺はチョコちゃんに一度も告白なんてしてない。
チョコちゃんが好きなのは、俺じゃない。今更こんなことに気付くなんて、俺は大バカだ。なんとなく気分が重くなったから、今日はもう帰ることにした。

家に帰ると、見たことのない女の人が居た。人間年齢30歳くらいの人。エプロンをしている。
「お帰りなさい、ジョンさん。はい、ドッグフードですよ〜」
見たところ家政婦さんらしい。ババァなら、絶対に他人に俺を任せたりしない。なんか寂しくなってきた。
そして気付いたんだ。今までの生活が俺にとって一番幸せだったんだと。

名前はもう『マドンナ』に慣れちゃったから、今更変えるなんてできない。『マドンナ』じゃないと落ち着かない。
服はいつも着てたから、着てないと気持ち悪い。
ババァはキモいし、香水くさいし…でもあいつほど俺を大切にしてくれる飼い主はいない。だからいなくならないでほしい。
体は痩せてかっこよくなったけど、やっぱり努力して自分の力でやせないと意味ないと思う。
人間の言葉は話せて楽しかったけど…そういえばババァが人間の言葉話せるようになるために、先生呼んでくれるって言ってたっけ。
それで一緒にお話しようねって、一方的にだったけど約束したっけ…。
チョコちゃんは俺のこと邪魔としか思ってくれないから、そっけない態度をしかとってくれない。でもその中にわかりにくいけど優しさがあって…そんなチョコちゃんが好きなんだ。
運動神経は、悪いから俺なんだ。短所だって大切な俺の一部なんだ。
戻りたい…戻りたい…。



目が覚めると、ババァのでかい顔があった。汗をかきながら寝ていた。いつも思うが…キモい。もっと美人な飼い主がいい。
なんか夢を見た気がする。内容は忘れたけど、とても大切な夢…。
いつか思い出せるといいな。






このお話は、星音さんにリクエストで書いて頂いたお話です。
マドンナちゃんは星音さんの書いているお話「消えた記憶」に登場している犬で
本編「消えた記憶」は星音さんのHPにて連載されています。

今回、キリ番を踏ませていただけたおかげで
本編では見られなかったマドンナちゃんの優しい一面を
拝見することが出来て、とても良かったですv

マドンナちゃんはやっぱり嫌がっていても、
どこかでおばさんの事を大切に思っていること。

近くに居ると気がつかないけど
離れてみると分かることって多いと思います。

いつか、マドンナちゃんも思い出せるといいですね。

そして、言葉が話せるようなったらおばあさんに伝えてあげてほしいな。
すごく喜ぶと思います(笑)

最後になりますが・・・星音さんへ
心温まるお話と、とっても素敵な感動を
ありがとうございました!!

rafu"

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